■ウイスキーの起源

 酒の歴史は古い。紀元前5400年頃のイランの壷からは、ワインの残留物が発見されている。また紀元前9000年頃の中国の遺跡からは、米や果物等を原料にしたと思われる酒の残留物が見つかっており、これが世界最古の酒だとされている。蒸留における初期の歴史についてははっきりとわかっていないが、文明発祥の地であるメソポタミア地方で紀元前3500年頃には行われていたとも言われている。また文献では、紀元前12世紀の中国の史書に蒸留酒についての記述がある。西暦200年頃のエジプトには大麦の蒸留酒があったと記録にあるが、これこそがウイスキーの起源と言えるのかもしれない。

 スコットランドで最初にウイスキーについての記述があったのは、1494年のことだ。スコットランド王室財務記録帳なるものに、「王の命令により修道僧ジョン・コーに8ボルの麦芽を与え、アクアヴィテを造らしむ」と書かれている。ボルというのはスコットランド古来の重量・容量の単位で、1ボルはおよそ63.5キログラム。すなわち8ボルだと、500キログラム程度だということになる(ボルを容量の単位だとみなした場合は、換算は異なってくる)。アクアヴィテ(Aquavitae)というのはラテン語で、"生命の水"と訳されアルコールを意味する。フランスではブランデー類を総称してオウ・ド・ヴィー(Eau de Vie)と呼び、北欧では地酒がアクアヴィット(Aquavit, Akvavit)と呼ばれているが、いずれも語源は同じだ。

 ウイスキーの語源はゲール語のウシュク・べ一ハ(Uisge Beatha)だといわれている。その意味はアクアヴィテ(Aquavitae)と同じ"生命の水"だ。12世紀にアイルランドを占領したイングランド軍には、この言葉がウイシュギ(Uishgi)と聞こえたという記録が残されている。それが後にウスケボウ(Usquebaugh)となり、ウスケ(Usuque)、ウイスキー(Whisky)と変化していった。

 18世紀になると、ウイスキーという単語がぽつりぽつりと使われ始める。スコットランド人のジョン・スチュワートが、1736年に義理の兄弟に書き送った手紙の中でウイスキーという言葉が見受けられるが、これが最も古い記録だという。1755年にはサミュエル・ジョンソン博士が編纂した英語辞典に、ウイスキーという単語が記載された。また、1759年生まれのスコットランドの国民詩人ロバート・バーンズは、スコッチウイスキーをこよなく愛し、いくつかの詩の中でウイスキーという言葉を登場させている。その後、次第にウイスキーという言葉が社会に普及していった。 (それ以降の歴史は「ウイスキー小史」をご参照ください)


■ウイスキーとは?

 ウイスキーという酒は、「穀物を原料として、糖化、発酵、蒸留を行い、木製の樽に貯蔵し熟成させた酒類」と一般的には定義づけることができる。ただし、ウイスキーは多くの国で造られており、その国ごとの定義が存在することもまた事実。例えば日本では、貯蔵・熟成は法律で義務付けられていない。またメコンという銘柄のタイのウイスキーは、サトウキビから造った廃糖蜜とタイ米が原料でありウイスキーというよりはむしろラムに近い。インドでも、廃糖蜜を原料にしたウイスキーが製造販売されている。

 原料の穀物は、大麦、ライ麦、小麦、オート麦、トウモロコシ等。糖化は基本的に発芽した穀類の酵素力のみによって行われるが、アメリカのように酵素剤の使用が認められている国もある。発酵は酵母による糖類の資化によって行われ、アルコール分を含むモロミを生成。発酵したモロミは蒸留器で蒸留され、アルコール度数の高いニューポット(ニュースピリッツ)を生成する。ニューポットは水で60数%程度まで希釈されたのち(まったく希釈しないケースもある)、貯蔵・熟成される。

 ボトリングする際のアルコール度数は、一般的には40%以上と定めらている。しかし日本のように規定が緩い国もある。添加物の規制も国によってさまざまだ。もっとも厳しいのがアメリカンウイスキーで、ボトリングの際に水以外は一切加えてはならないと法律で定められている。その次がスコッチとアイリッシュだが、色調整を目的としたカラメルのみの添加が認められている。このカラメルはスピリットカラメルと呼ばれ、風味への影響はない。


■ウイスキーの種類

 一言でウイスキーといっても、様々な種類がある。分類の仕方にもいろいろあり、原料や製造方法、もしくは産地によって分けることもできる。

 ●紛らわしいウイスキーの呼称一覧

モルトウイスキー: 大麦麦芽を原料とし、ポットスティルで蒸留して造られる。単にモルトと呼ばれることも多い。なおロッホ・ローモンド蒸留所のように、麦芽100%を原料とし連続式蒸留機で造ったものを、独自のルールでモルトウイスキーと呼んでいるところもあるが、これは特殊な例。
グレーンウイスキー: 穀物各種を原料とし、連続式蒸留機で造られる。
シングルモルトウイスキー: 単一の蒸留所で造られるモルトウイスキー。シングルモルトと略されることも多い。
シングルグレーンウイスキー: 単一の蒸留所で造られるグレーンウイスキー。
ブレンデッドモルトウイスキー: 複数の蒸留所で造られるモルトウイスキーを混和したもの。
ブレンデッドグレーンウイスキー: 複数の蒸留所で造られるグレーンウイスキーを混和したもの。
ブレンデッドウイスキー: モルト原酒とグレーン原酒がブレンドされたウイスキー。通常モルト原酒は数種類から数十種類の蒸留所のものが混ぜ合わされる。
ヴァッテドモルトウイスキー: ブレンデッドモルトウイスキーと同じ。とても普及している呼称だが、2006年にスコッチウイスキー協会(SWA)から今後はなるべくブレンデッドモルトと呼び代えるようにという通達が業界関係者にあった。原酒を混合する容器をヴァット(大きな桶)と呼んでいたため、この呼称が生まれた。
ヴァッテドグレーンウイスキー: ブレンデッドグレーンウイスキーと同じ。
ピュアモルトウイスキー: かつてはブレンデッドモルトを意味する呼称として用いられた。広義ではシングルモルトをも意味するが、表現が曖昧なため今日では使用を自粛する傾向にある。
オールモルトウイスキー: かつてはブレンデッドモルトをを表す言葉として用いられたが、ピュアモルトと同様、定義がが曖昧なため今日では使用が自粛される傾向にある。なお日本のニッカは「オールモルト」を商品名として使用しているが、連続式蒸留機で蒸留した原酒を使用しているため、モルトウイスキーのカテゴリーには含まれないという見方もできる。

 ●生産国・地域による分類

  1. スコッチウイスキー
  2. アイリッシュウイスキー
  3. アメリカンウイスキー
  4. カナディウイスアンキー
  5. ジャパニーズウイスキー
  6. その他のウイスキー
 1〜5は世界の五大ウイスキーと呼ばれる。その他のウイスキーは、アジアではインド、パキスタン、タイ、トルコ、ブータン、中国、台湾など。ヨーロッパではフランス、ドイツ、スペイン、スウェーデン、フィンランド、オーストリア、ベルギー、スイス、デンマーク、チェコ、ポーランド、ラトビアなど。その他では南アフリカ、ニュージーランド、オーストラリア、ブラジル、ウルグアイといった国々。

 ●五大ウイスキーの特徴と比較

 
生産地域
タイプ
貯 蔵
スコッチウイスキー スコットランド モルトウイスキー 原料 大麦麦芽のみ 3年以上
蒸留器 単式蒸留器
グレーンウイスキー 原料 大麦麦芽、トウモロコシ、小麦、大麦等
蒸留器 連続式蒸留機
アイリッシュウイスキー アイルランド共和国
および北アイルランド(U.K.)
ピュアポットスティルウイスキー 原料 大麦麦芽、大麦、小麦、オート麦、ライ麦等 3年以上
蒸留器 単式蒸留器
モルトウイスキー 原料 大麦麦芽のみ
蒸留器 単式蒸留器
グレーンウイスキー 原料 大麦麦芽、トウモロコシ、小麦、大麦等
蒸留器 連続式蒸留機
アメリカンウイスキー アメリカ バーボンウイスキー 原料 トウモロコシ51%以上、大麦麦芽、ライ麦、小麦等 必要
(期間に規定なし)
蒸留器 連続式蒸留機(単式蒸留器)
ライウイスキー 原料 ライ麦51%以上、大麦麦芽、小麦等
蒸留器 連続式蒸留機
ホイートウイスキー 原料 小麦51%以上、大麦麦芽等
蒸留器 連続式蒸留機
コーンウイスキー 原料 トウモロコシ80%以上、大麦麦芽等
蒸留器 連続式蒸留機
カナディアンウイスキー カナダ フレーバリングウイスキー 原料 大麦麦芽、ライ麦麦芽、ライ麦、トウモロコシ等 3年以上
蒸留器 連続式蒸留機(単式蒸留器)
ベースウイスキー 原料 大麦麦芽、ライ麦麦芽、ライ麦、トウモロコシ等
蒸留器 連続式蒸留機
ジャパニーズウイスキー 日本 モルトウイスキー 原料 大麦麦芽のみ 規定なし
蒸留器 単式蒸留器
グレーンウイスキー 原料 小麦、トウモロコシ、大麦麦芽等
蒸留器 連続式蒸留機



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