Caperdonich
グレン・グラントの弟分、「キャパドニック」

キャパドニックは、ドライでフルーティな風味が持ち味のスペイサイドモルトです。この蒸留所は、残念ながら2003年に閉鎖されてしまいました。まだ建物は残っていますので休止中と見ることもできますが、操業再開の可能性は低いといわれています。ですがシングルモルトはまだ市場に出回っていますので、入手は可能です。軽い風味と切れ味のいいテクスチャーが持ち味で、長期熟成させたものはドライフルーツのような濃厚で魅惑的なアロマを放ちます。

キャパドニックは、1898年にグレン・グラントの第2蒸留所としてローゼスの町に建造されました。そのため蒸留所名も、創業してしばらくはグレン・グラント・ナンバー2と呼ばれていました。創業後間もなくして、蒸留所はウイスキー不況という試練を迎え、3年目には早くも操業停止に追い込まれてしまいます。その後操業が再開されたのは、なんと半世紀以上を経た1965年でした。なお同じ名前の蒸留所が2つあってはいけないという新たな法律ができたため、グレン・グラント・ナンバー2はこのときにキャパドニックと改名されました。

新蒸留所が建造された目的はシングルモルトの製造販売ではなく、ブレンデッド用の原酒を確保することでした。といいますのも、グレン・グラントがシングルモルトとして広く認知されとても人気があったため、ブレンデッドにまわす原酒が不足するようになってしまったのです。独自の蒸留所名が与えられなかったのには、おそらくそんな理由もあったのでしょう。

ですのでキャパドニックのオフィシャルボトルは操業していた頃には一度も販売されたことがなく、わずかな量のボトラーズものが出回っているだけなのです。なお2005年には、ペルノ・リカール社が1988年ヴィンテージ16年物のファーストオフィシャルボトルをリリースし、話題になりました。蒸留所が閉鎖された後に、オフィシャルボトルが発売されるというのもおかしな話ですが、そういう例は他にもときどき見かけますね。

ローゼスの町にはキャパドニックを含めると、現在5つの蒸留所があります。創業の古い順に並べると、グレン・グラント(1840〜)、グレンロセス(1878〜)、グレン・スペイ(1884〜)、スペイバーン(1897〜)、キャパドニック(1898〜2003)となります。もっとも若いキャパドニックは、もし復活しなければもっとも短命だった蒸留所だということになりますね。まだときどきは見かけるキャパドニックですが、そのうち品薄になることは間違いありません。今のうちに、ぜひ飲んでおきたいシングルモルトの一つです。


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