Benrinnes
硬派なスペイサイドモルト、「ベンリネス」

スペイサイドモルトのベンリネスは、人に例えると硬派でシャイ、そして無口ですが芯はしっかりしている、そんな印象を私は持っています。オーナーであるディアジオ社の「花と動物シリーズ」、「レアモルト」以外のオフィシャルボトルは発売されたことがなく、ボトラーズ物でもあまり見かけないので、シングルモルトファンでもこの銘柄をご存じない方は多いのではないでしょうか。

ベンリネスと言えば、スコットランドでもっとも高い山の名前としても知られていて、標高は840メートルあります。蒸留所は山の北麓にあり、標高213メートルの地点に建てられています。ちなみに山を指す場合は、ふつう Ben Rinnes と2語で綴りますが、蒸留所の正式名称は1語で綴ります。また、近辺にはベンリネスという地名もあり、その場合も1語で綴るようです。

ベンリネス蒸留所が創業されたのは1826年ですが、1929年の大洪水で流失してしまいました。しかし1834年にジョン・イネス社が、1キロメートルほど北西にある現在の場所に蒸留所を再建します。そのため、蒸留所のオフィシャルな創業年は1834年となっています。また一説には、1834年に再建されるまで蒸留所はライン・オブ・ラザリー(敷地の農場の名)と呼ばれていて、ベンリネスと改名したのはジョン・イネス社だったとも言われています。

モルトウイスキーは通常2回蒸留で造られますが、ベンリネスではもろみの一部を3回蒸留するというユニークな手法がとられています。そのせいで軽い酒質になっているそうですが、私がベンリネスを「シャイで無口」だと感じるのはその影響なのかもしれません。

余談になりますが、2003年にストロナヒー(Stronachie)というブランド名のウイスキーが、デュワー・ラトレー社というボトリング会社からリリースされました。中身はシングルモルトなのですが、蒸留所名は明かされていません。しかし、その正体はベンリネスだとも言われています。飲み比べてみるのも楽しいかもしれませんね。

ちなみにストロナヒーというブランド名の由来ですが、昔の蒸留所の名前に因んでいます。ストロナヒー蒸留所は1890年代に創業し1928年に閉鎖されました。建物は、1950年代にすべて取り壊されています。


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