Balvenie
芳醇な蜂蜜とオレンジの風味、「バルヴェニー」

バルヴェニーは、蜂蜜やオレンジの風味が特徴的なシングルモルトです。濃厚で複雑な風味には昔からファンも多く、私も大好きなスペイサイドモルトのひとつです。

バルヴェニー蒸留所はウィリアム・グラント社によって1892年に創業されました。彼らが建造し運営している4つのモルトウイスキーの蒸留所(グレンフィディック、バルヴェニー、キニンヴィ、そしてアイルサ・ベイ)の中で、生まれた順番では次男坊に当たり、長男のグレンフィディック蒸留所とは5歳離れています。アイルサ・ベイは、昨年末に誕生したばかりの新しい蒸留所です。なお、かつてはレディバーンという名の兄弟もいたのですが、残念ながら1970年に閉鎖されてしまいました。

バルヴェニーはグレンフィディックと敷地も隣接していて、原料の大麦や仕込み水(ロビー・デューの泉から引いています)は共通のものを使用しています。にもかかわらず、すっきりとしていて軽いグレンフィディックの酒質とは対照的に、バルヴェニーが仕上がっているのはとても興味深いですよね。

バルヴェニー蒸留所があるのは、スペイサイド地方というくくりの中では比較的南部に位置するダフタウン(実際には‘ダフタン’と発音されます)。スペイサイドの中では最も蒸留所がひしめいている町としても知られ、ウイスキー産業が大変盛んな町です。春と秋にここで開催されるスペイサイド・ウイスキー・フェスティバルには、世界中からウイスキーファンが集いにぎわっています。

また蒸留所の近くには、蒸留所名の由来となったバルヴェニー城があります。13世紀に造られ現在は廃墟となっていますが、かつてはスコットランド女王のメアリーが滞在したこともあり、スコットランド史上では重要な役割を果たした城でした。彼女にはブラッディメアリーというニックネーム(カクテルの名前にもなっていますよね)もあり、は悲劇の女王とも呼ばれています。廃位した後イングランドに亡命し、1587年にエリザベス女王によって処刑されました。

ちなみにバルヴェニーというシングルモルトは、ボトラーズものをほとんど見かけません。それはウィリアム・グラント社が、ボトラーズに対してシングルモルトの原酒の樽売りをしない方針だからなんですね。ですので、グレンフィディックも同様にボトラーズものはとてもレアです。他にはグレンモーレンジ社などもインディペンデントボトラーズにはシングルモルトの原酒を販売しないことで有名ですが、“自社が造るウイスキーには、最後まで責任を持つ”というポリシーには好感が持てます。


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