スコットランドの蒸留所では、蒸留所名のルーツがゲール語である場合がほとんどだ。それらの多くは発音が難しく、英語的な感覚が通用しないケースも少なくない。また地域ごとの発音の違いも顕著であり、ここで紹介してあるものは、あくまでも一例と考えて欲しい。
 ここに録音されているものは、ザ・スコッチ・モルト・ウイスキー・ソサエティーの創立者であり、前会長でもあるフィリップ・ヒルズ氏の発音である(一部はジョン・バトラー氏の発音)。氏の発音の特徴は“CH”がハ行に聞こえる点だ。これは、専門的には口蓋垂音の摩擦子音と呼ばれる発音で、日本語には存在しないものである。簡単に説明すると、『口蓋垂音(こうがいすいおん)』とは舌と喉の奥を使用した発音だ。口蓋垂とは、いわゆる“のどちんこ”のことである。『摩擦子音』は、口を小さくあけて呼吸するときに生じる音のことだ。勢いよく発せられる音であるため、日本人の耳には“ク”に聞こえることもある。氏の発音は比較的柔らかめで、例えば“グレンフィディック”は“グレンフィディッフ”となる。また“MORE”の発音も独特だ。

 ちなみに、ここの録音ファイルはジョン・バトラー氏のサイトにも設置されている。氏のご好意によって転載をお許し頂いた。よってこれらの録音ファイルの著作権は氏に属するものであり、無断転載を決して行なわぬよう、固くお願いする。